植物細胞生理学のお部屋へようこそ！

植物細胞生理学って何？

　21世紀は生物学の世紀などと言われ、生命科学の各分野も学際的な盛り上がりを見せています。特にゲノム情報とバイオテクノロジーの領域での知的所有権獲得競争は激化しており、世界的な関心の高さが伺がわれます。

コラム「遺伝子はDNAか？」へ

　植物細胞生理学は、高等維管束植物の生理的機能、生理的性質を細胞レベルで明らかにしようとします。細胞レベルでの研究に好都合という理由で、主に培養細胞を研究材料として用います。一方、植物個体あるいは植物組織の構成単位としての細胞が、その植物個体あるいは組織を構成する上で、どのような機能を果たしているか、どのような役割を担っているか、という点も研究対象とします。
　両者の比較により、培養細胞が栄養増殖の状態にある場合と、植物個体あるいは組織の構成単位として存在する場合とで、機能や特徴にどのような違いが認められるかという事も明らかにできるものと考えます。

「植物細胞の分裂と成長の様式」へ

「植物組織の特徴」へ

「植物の胚発生」へ

　後でも述べますが、植物細胞生理学と植物細胞工学は、基礎と応用、車の両輪のような関係にあります。植物細胞生理学はまた植物生理学との関係も重要です。個体レベル（植物生理学）と細胞レベル（植物細胞生理学）での植物の生理的機能、生理的性質を比較する事により、それぞれのレベルで特徴的な機能・性質を明らかに出来るものと考えます。

　最近では、育種の分野においても「細胞育種」や「分子育種」等のバイオテクノロジー技術の応用が盛んで、植物細胞生理学や植物細胞工学と関連の深い領域を扱うものが多いのですが、育種では、作出された「成熟個体」が興味の対象であり、その生産性の向上を主な目的としているのに対し、植物細胞生理学は「植物細胞」そのものを興味の対象とした基礎研究の領域を担います。

どんな研究をしようとしているの？

　植物細胞の培養、培養細胞の観察を通して、植物細胞相互の情報伝達機構、分化全能性、部位の違いによる植物細胞の個性、植物細胞の多細胞生物としてのアイデンティティーについて研究したいと考えています。

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研究を支える技術

　植物細胞の研究には組織培養と言われる技術が必要です。組織培養技術の応用例として最も身近なものには、ラン植物の栽培があります。現在、お花やさんで手に入るランのほとんどは組織培養によって得られたクローンです。
　栽培が難しくて高価だったランも、現在では組織培養技術の応用によって、均一で優良な品質のものを安価に得ることができるようになりました。種子を得るのが難しい、均一な品質が保ちにくい、と言うような問題を組織培養によって解決できますし、メリクローンからウィルスフリーの植物を得る事も可能になりました。
　発芽から種子を得られるまでの生活環の長い植物の成熟個体を、早く大量に得る目的では、組織培養が大変有効なのです。
　植物細胞を操作する分野は、特に植物細胞工学といって、バイオテクノロジーを支える中核をなす分野です。これらの基本はズバリ無菌操作です。無菌操作とは、培養しようとする目的の植物細胞を、コンタミネーションの原因となる雑菌から時間的・空間的に隔離して扱う事です。

主な研究施設

イメージ	機器名	機　種	仕　様	使　途
	光学顕微鏡	オリンパス BX-50	プラン セミアポクロマート 位相差装置付き	植物細胞の形態、 分化状態などを調べるのに使用します。
	実体顕微鏡	ニコン SM-5	固定倍率（×20） WD = 100mm	外植片を切り出したり、胚の形態を観察したりする時に使います。
	遠心機	クボタ 2410	最高回転数 4000rpm スイングローター 50ml×4	細胞の回収、選別、洗浄に使用します。
	インキュベーター	サンヨー MIR-153	冷凍機付き -10℃〜+60℃	温度管理により、培養細胞の生育に至適な条件を与えます。
	インキュベーター	EYELA LTI-2000	ペルチェ素子冷却器付き 3℃〜40℃	温度管理により、培養細胞の生育に至適な条件を与えます。
	インキュベーター	三菱電機 CN-25A	ペルチェ素子冷却器付き 3℃〜45℃	温度管理により、培養細胞の生育に至適な条件を与えます。 　試薬や培地の保管にも使用します。
	クリーンベンチ	サンヨー MCV-710ATS	集塵効率 0.3μmにおいて 99.99％ クラス100（U.S.Fed.Std.209E）	無菌操作の際に使います。 　作業スペース内を濾過した空気で満たし、一定の滅菌条件を確保します。
	電子天秤	ザルトリウス BP-121S	読み取り限度 0.1mg 最大秤量 120g 更正装置付き	試薬を計り取るのに使います。
	震盪機	EYELA MMS-210S	旋回式震盪機 旋回円の直径 25mm	懸濁培養 （液体盪振培養） に使用します。
	マグネティック スターラー	EYELA RCH-3	ホットプレート付 撹拌容量 50m�P〜3�P	培地を調製する際に使います。寒天の融解にも使えます。
	真空ポンプ	Fine FP-15N	ダイヤフラム式 加圧・減圧両用ポンプ	液体培地の吸引、試薬などの吸引濾過に使います。
	オートクレーブ	SEBの圧力釜で代用	1kg/cm2 の圧力下で 121℃	培地や器具、水等を高圧蒸気滅菌するのに使用します。