1961年頃に製造された「ハマーランド」の民生用通信型受信機です。2つの扇形のスケール窓が左右シンメトリックに配されているのは HQ シリーズに共通なデザインで、左側がメインダイヤル、右側がアマチュア無線用のバンドスプレッドダイヤルです。HQ-180 と同様に主電源をコントロールするタイマー機能を持つテレクロン社製の24時間表示の時計が装備されていますが、配置位置が HQ-180 ではパネル左上部であるのに対し、HQ-145X ではパネル右上部です。
HQ-145X は HQ-180 と同様の大きなボディーを持ち、上、左右の3面にパンチングメタルが使われています。HQ-180 には上面にドアが設けられていますが、HQ-145X にはこのドアはありません。バリコン、真空管、IFTなどの部品は、余裕のある大きなボディーの中にゆったりと二次元的に配置されており、パンチングメタル越しに上面から覗き込むと、信号の通り道に添ったトレーンを確認することができます。
受信周波数は 0.54MHz〜30MHz のジェネラルカバレッジで、0.54MHz〜1.6MHz、1.6MHz〜4MHz、4MHz〜10MHz、10MHz〜30MHz の4分割のバンドポジションを与えています。周波数構成は 10MHz〜30MHz のバンドポジションだけが中間周波数 3,035KHz および 455KHz のダブルスーパー、他は中間周波数 455KHz のシングルスーパーで、10MHz〜30MHz のバンドポジションでは、高一中二の受信機にコンバーターを重ねたようなイメージになります。
受信電波形式は AM、SSB、CW で、サイドバンドの上側と下側には独立のポジションは与えず、BFO のピッチを変えることで対応しています。モードポジションとしては SSB も準備されてはいますが、HQ-100A 同様 BFO による復調であることと、選択度の不足から、その性能は高くありません。HQ-100A では Qマルチを装備しているのに対し、HQ-145X では 3,035KHz にクリスタルフィルター（ただし1素子）を挿入しています。
付加回路としては、ノイズリミッター、AVC（AGC）、リジェクションあるいはノッチに相当する混信除去回路 "Slot Frequency Control" を備えています。また、この HQ-145-X は 100kHz のキャリブレーター（マーカー）も装備しています。
この HQ-145X は信頼のおける技術者の手により低周波増幅部の周波数特性が改善されております。一般の通信型受信機のように特異な AF部の特性による了解度の向上効果はありませんが、AF部が素直なだけに、RF部および IF部の印象がそのまま受信音の印象として感じ取れますので、遠くから送信された電波が、はるばる旅をしてきたものであることを実感します。
電源は 60Hz 117V を要求します。前述のテレクロン社製の24時間表示の時計は、60Hz で設計されています。この HQ-145X には 11本の真空管が使われています。背面には送信機と連携してトランシーブできるようにリレーの端子が出でいます。アンテナ接続用の端子は 300Ω の平衡だけで、M型レセプタクルなどの不平衡型の端子はありません。