PowerBoo180c

　PowerBook180cは、初めてTFTカラー液晶パネルをモニターに採用したPowerBookです。
PowerBook100、PowerBook140、PowerBook170の「PowerBook」三機種が発売された当時は圧倒的な完成度の高さで大好評でした。
　トラックボールをキーボードの手前中央に配し、その両脇をキータイプ時のリストレストとして活用するレイアウトは今では当たり前となった感がありますが、この優れたレイアウトを世界で最初に実現したのはAppleの「PowerBook」です。

　PowerBook180cは、この初代PowerBookのデザインを引き継ぎ、しかしその中身にはciにも優る33MHzクロックの68030と68882（FPU）が与えられ、カラー液晶が搭載される事により、デザイナーの要求にも応えられる機能を備えた1993年当時最強のPowerBookです。
　

　CPUは、クロック周波数33MHzの68030に加え、同じクロック周波数のFPU 68882も搭載されています。RAMは4MBを搭載したモデルと8MBを搭載したモデルがあり、メモリエリアの最大はどちらも14MBまでです。

　はじめてPowerBookに採用されたTFTカラー液晶パネルの解像度は640×480ピクセルで、同時期に市場に出されていたPowerBook165cの640×400ピクセルよりも縦方向に80ピクセル分だけ広くなっています。640×480ピクセルは、CRTディスプレイの13 inchモードに相当する解像度です。
　キーボードは、ストロークもタッチもデスクトップ型のものに劣りません。大きなトラックボールと、優れたインダストリアルデザインにより、素晴しい使い勝手が実現されています。

　PowerBook180cは、古典的なPowerBookの内部レイアウトになっています。内部へのアクセスには少しコツが要りますが、正しく「解体」する事さえできれば、その後の部品の交換などのメンテナンス性は極めて良好です。
　今回はハードディスクの交換を前提に作業しますが、作業で最も重要な「解体」の手順は共通ですので、よく見て下さい。作業に先だち、ACアダプターとバッテリーを抜いておきます。

　PowerBook180cは、上下2つのユニットから成っています。作業は、先ず上下2つのユニットを分割する事から始めます。5箇所のネジと3箇所のラッチを外しますが、ネジを外す順番に注意して下さい。
　先ず最初に上の写真の位置のT-8のビスを外します。過って締めないように注意して下さい。このビスは組み立てる時も最後にして、なおかつ決して「締め過ぎない」ようにして下さい。
　皿ネジになっていますので、締め過ぎてしまうとプラの匡体にクラックが入ってしまう可能性があります。
　底面の4箇所のT-9のビスを外します。ビスは無くさないようにまとめて保管しておきます。

　次に3箇所のラッチを外します。ラッチは前面にあります。後面の噛み合わせを浮かせ、上部ユニットを前に2mmほどずらして外します。上の写真はバッテリーを外した部分で、ラッチが1箇所見えています。

　上下のユニットを分割します。上下のユニットは、電気的にはフラット・ケーブルにより、たった1箇所のコネクターで接続されているだけです。シールドの目的で、所々バネのような機構で接していますが、機械的には「はめ込まれているだけ」です。
　コネクターを外すには、上の写真のように後面を浮かせながらコネクターにアクセスします。指が届く位置にありますので、器用な人なら手で外せるはずです。どうしても指が届かない人は、絶縁体でできたスパーテル等をこじ入れて外すしかありません。この時、ボードに無理な力がかからないよう、そして配線をキズつけないように注意しましょう。
　上の写真の外部モニター出力ポートの奥に「コネクター」が見えます。

　上部ユニット。トラックボール、キーボード、LCD、スピーカー等がこの上部ユニットに納まっています。下部ユニットとの「コネクター」が写真の上部、中央右よりに見えます。
　銅メッキの匡体裏側に「大きな指紋」が残っていました（写真右下部）。アメリカでアッセンブルされたものですので、アメリカのクラフトマンが組み立てた時のものと思われます。

　分割された下部ユニットのドライブ部分。HDDとFDDは一体型のステンレス製ブラケットで固定されているだけです。ブラケットは5箇所のT-9ビスと1箇所のラッチで下部匡体に固定されています。
　1箇所のラッチはT-9ビスを外し、HDDを浮かせて外します。

　HDDのコネクターを抜きます。HDDケーブルはブラケットに粘着材で貼られているので、HDDをブラケットごと持ち上げて作業した方が楽です。フィルムを傷つけないよう、そして無理な力を加えないよう細心の注意を払います。
　直接ピンに触れる事になりますので、静電気の除去を確実に行うと共に、新たな静電気の発生を抑えるよう気を配ります。

HDドライブを外した所。

HDDを外した下部ユニット全景。

より良く使うために・・・

　お勧めのOSは漢字Talk7.5.3リリース2です。漢字Talk7.5.3ならDOSフォーマットのFDを読み書きできます。68882が搭載されてはいるものの、残念ですがFPUが活躍するような用途には向きません。メモリ上限が14MBですので旧コネクティクス社のラム・ダブラーがとても重宝します。
　限られたメモリエリアではおのずと用途が限られてきますが、堅牢で優れたキーボードのおかげで、テキスト編集の用途としてまだ十分に活路が見出せます。PowerBook180cのキーボードはASCII配列のフルサイズ、ストロークも十分です。
　PowerBook180cのTFT液晶は、10年近くも経過した現在でも大変美しく、初めてナカウラでPowerBook180cを目にした時の印象が蘇ります。

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